現在では標高についてのデジタルデータはかなり充実してきていますが、湖沼のデータについては利用できるものが限られています。本記事では国土地理院が提供している湖沼図から水深のラスターデータを作成する方法を説明します。ただし、この方法は私が手探りで調べたことをまとめたものですので、もっと良い方法を知っている方がいたら是非教えていただければと思います。
水深データの作成は以下の4つのステップからなります。
- 湖沼図の入手
- ジオリファレンス
- 等深線の書き込み
- 内挿
1. 湖沼図の入手
地理院地図にアクセスし、目的の湖沼図を入手します。アクセスしたら最初は標準地図が表示されているはずです。この状態で目的の場所(ここでは琵琶湖の南湖)が画面の中央にくるように移動します。
次に湖沼図へ切り替えます。画面左上にある「地図」と書かれたアイコンをクリックすると、左側にパネルが現れます。ここで「地図の種類」の欄から、「土地の成り立ち・土地利用」>「湖沼図・湖沼データ」>「湖沼図」とクリックしてください。すると「選択中の地図」の欄に湖沼図が追加されたと思います。ここまで来たら標準地図は消したほうが見やすくなると思うので、「☓」をクリックして消しましょう。また、画面右上の「設定」から「中心十字線」を「OFF」にすることで余計なものを省くことができます。
重要な点は、同じく「設定」>「グリッド表示」から「緯経度グリッド」を「ON」にしておくことです。これは次のジオリファレンスのステップで利用します。ここまでくると図1のような画面になっていると思います。
図1 |
最後にこの地図を保存するのですが、注意しなければならないのは地図の解像度が現在表示されている解像度で保存されることです。つまり解像度の高い地図が必要なら、できるだけ拡大してから保存する必要があります。しかし一方で、保存する範囲が広いと解像度を高くしすぎることでデータ量が大きくなり、保存できなくなります。このあたりは必要に応じて調整してください。
保存は「設定」の左にある「共有」から行います。
ここでtwitterアイコンの右にある山のような形のアイコンで画像の保存ができます。保存方法ですが、「範囲を固定」をクリックし、保存したい範囲を指定します。範囲の指定は画面に現れた赤枠でするか、直接数値を入力することで行います。ここでは南湖全体をカバーするため、図2のように指定しました。指定したら「OK」をクリックし、適当な名前を付けて保存します。
図2 |
2. ジオリファレンス
地理院から入手した地図は現状ではただの画像データです。これに位置情報を埋め込みます。ここではフリーで利用可能なQGISを使ってジオリファレンスを行います(ここではバージョン3.22を使っています)。QGISを開いたら「ラスタ」>「ジオリファレンサ」を選択します。するとジオリファレンサのウィンドウが開くので、「ファイル」>「ラスタを開く」を選択し、先ほど保存した湖沼図を開きます。そして、緯度経度のグリッド線の交点が明瞭になる程度に画像を拡大します。
図3 |
画面上部の黄色い歯車のマークのすぐ隣にある「点を追加」が選択されていることを確認したら、画像の角あたりにある適当なグリッド線の交点をクリックします(ここでは図3の◯で囲んだ位置)。すると図3のように「地図座標の入力」というウィンドウが開くので、クリックした交点の座標を10進数で入力します。湖沼図に表示されているのは60進数なので、ここのサイトなどで変換してください。入力欄の下は投影法の選択欄です。ここは「EPSG4326」にしておきます。
同じ手順で画像の四隅それぞれに位置情報を入力します。入力し終えたら、左上の緑の三角形のマーク(あるいは「ファイル」>「ジオリファレンスを開始」)をクリックします。「変換の設定」というウィンドウが開きますが、「出力ラスタ」の欄で出力ファイルの名前を指定し、下の「完了時にQGISにロードする」にチェックが入っていることを確認したら「OK」を押します。うまくいけば画面の上部にジオリファレンスが成功したとの表示が出るはずです。出なければ再度三角形マークを押してみましょう(なぜか自分の環境ではもう一度押さないと出ない…)。できたらジオリファレンサのウィンドウを閉じます。元のQGISのウィンドウに湖沼図がロードされているはずです。ここで湖沼図にマウスカーソルを持ってくると、その位置の緯度経度がウィンドウ下部の座標欄に表示されているでしょう。
念の為、座標が合っているかを確認します。国土数値情報から湖沼図のシェープファイルをダウンロードし、解凍したら、「レイヤ」>「レイヤを追加」>「ベクタレイヤを追加」で解凍したシェープファイル(.shp)をロードします。その結果、レイヤにシェープファイルが追加され、図4のように湖沼図の上に琵琶湖の領域が色付きで示されると思います。この色付き部分と湖沼図上の琵琶湖の位置が一致していたらジオリファレンスは成功です。
長くなるので残りは後半に続きます。